新型コロナウィルスの影響なのか、小銭を渡す際に小銭をトレーに置くコンビニが増えています。感染対策の一環でしているのはわかりますが効果があるのか、という話を耳にします。
医療とは直接関係ありませんが感染という広い領域においては無関係とは言えないので調べてみました。
一昔前のコンビニやレストランあるいはその他のショップではお釣りは手渡しが普通でした。むしろ直接渡した方が客に敬意を払い良い接客とされているくらいでした。
しかし新型コロナウィルス感染が増加したことで感染予防の意識が高まりお釣りの受け渡しが改善されました。コンビニの意見としては、直接手と手が触れることで感染リスクが高まるのでトレーでの受け渡しに変えたとのことでした。
このお釣りをトレーに置く行為、感染予防に効果があるかというと、正直に言えば高い効果があるとは言い切れません。
その理由に、例えば1人のお客がおにぎり2個とお茶のペットボトルを買いに来たとします。棚からとる時に手に触れます。それをレジへもっていくと店員はおにぎり2個とお茶のペットボトルを手に取りバーコードを端末で読み込みます。この時、おにぎりにもペットボトルにもウイルスが付着している可能性はあります。客も店員も商品に触れているのです。
そしてトレーにお釣りを置いたとしても、そのお金に店員は触れているわけですし客はそれを手に触れて財布に入れます。つまりお釣りの受渡方法だけ対策しても感染予防とは言い切れないのです。もっと言えば、レジの中に入っているお金は他の客が支払ったお金であり、そのお金にもウイルスが付着している可能性があります。
さらには手袋をしている店員を見かけることも多くなりましたが、手袋にも当然ですがウイルスは付着します。医療の現場でも手袋はしますが、それは医療従事者の手指を血液や体液など感染性物質による汚染から守ったり、医療従事者の手指から患者へ微生物の付着を防ぐ目的があるからです。サービス業がする手袋はそれとは大きく意味合いが異なるように見えます。
そんな対策は意味があるのか、あるいは感染予防にそこまで過剰に意識を高くする必要があるのか、最初はそう思っていました。調べていくとどうやら過剰になっているのはコンビニ側ではなく客側にあると気づかされます。
福岡で起きた事件、ドラッグストアの女性店員が釣り銭を手渡ししたところ、客である無職の男(69)は「コロナがはやっているのにふざけているのか」と手渡しされたことにクレームをつけ、さらには仲裁に入った店長の顔を殴り福岡県警に逮捕されています。
スーパーマーケットやコンビニでは商品陳列やレジの袋詰めに対して「素手で触るな」というクレームが届いた事例もあります。
コンビニは毎日多くの人が利用します。常識のある人もいれば非常識の人もいます。昨今では、客が従業員に悪質なクレームや暴言を吐く「カスタマーハラスメント」が問題視されています。
コンビニに限ったことではなく、接客する業種では起こりえます。お金を払う立場だから偉いと思い込み横柄な態度を取る非常識な客は一定数います。「お客は神様」という日本企業の経営の考えが、間違った解釈で一般に広まり根付いてしまった背景がそうさせたのでしょう。
コンビニの店員が不愛想だったり、雑な対応だったりすることもありますが、それはさておき、今回の件に関して言えば客側が過剰になりすぎた結果と言えます。
ウイルスはコンビニにだけいる訳ではありません。ありとあらゆるところに存在します。服、ズボン、ドアの取っ手や水洗レバー、机、椅子、自動販売機のボタン、エレベーターのボタン、そして空気中にも存在してるのです。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)のウイルス学者、ニルチュ・ファン・ドゥーラマーレン氏と、ロッキー・マウンテン研究所の研究チームは、SARS-CoV-2が様々な物質の表面でどれくらい生存できるのか研究した結果、せきの飛まつで空中拡散した新型ウイルスは、最長で3時間生存できると発表しています。
また、段ボールに付着したSARS-CoV-2は最大24時間、プラスチックやステンレスの表面では2~3日間生存することも明らかになっています。
ドアノブなどつるつるした平滑な表面より、バスタオルや衣服など凸凹な表面の方が長く生存します。
つまり、新型コロナウィルスが死滅するまでの時間は、空気中のウイルスで3時間、表面に付着した場合は24時間以内となるため、日常生活では常に注意を払う必要があるのです。
ただ、アルコール除菌をした場合はこの限りではありません。手に触れる部分、または何かに触れたときは手そのものにアルコール除菌することでウイルスを死滅させられます。共有部分は特に除菌を心掛けましょう。
さらには、こまめに手洗いをすることで手に付着したウイルスを物理的に流す、衣類などは洗濯により付着したウイルスを物理的に流すことが重要です。
少し話がそれましたが、お釣りをトレーに置くのは感染予防対策に効果があるのかないのかではなく客からクレームが入らないように改善していることが伺えます。つまり、感染対策ではなく客対策といった意味合いが強いと言えるでしょう。